父の庭先から『飲み屋』

今日は飲みたいと思った。
勿論、このご時世、許されざることであったが、ビールが飲みたいと思った。

弁護士事務所を出るとき、瓦礫が砂になって砂漠の中に消えてゆく景色が見えた。
問題は何一つ解決しているわけではないが、すべてが私の後方に流れ去ってゆくのを感じていた。

何故か・・・
この十数年、面倒を見てきたつもりの、自分の思い上がりに気づいたこと。
胡散臭い芝居にいつの間にか自分も登壇して、犯罪を断罪するどころか、加担していたことに気が付いたから。
恥ずべきは自分以外に他ならない・・・

このまま、ただでは帰れない!

時間は午後4時少し前。
新宿西口の飲み屋街。
今日も33度。西日は灼熱地獄のように路地裏を炒る。

シールドも無い机を囲んで、大勢がてんでに飲んでいる
一瞬戸惑うが、促されて2階に上る。
勿論、シールドも無い、小さな机を囲んで、ささやかな宴会を楽しんでいる。
窓、全開。
暑さがいやなら、ここに来る資格はない。
聞けば、彼はしょっちゅう、友達とここへきているという。
安いんだ・・・と笑いながら言う彼に、いつの間にか大人になったんだと感じた。

もっともこれでは、東京からコロナが消えるわけはあるまいと思いながら、決して安いとは思えないつまみを口にしていた。

汚い居酒屋って必要な時もある。

15年前の任意整理。
今回の自己破産。
その間に犯した数々の犯罪。多重債務者のレッテルを張られた彼を、心配することはもうない。
何とか真っ当な道に戻さねばならないと思い込んでいた、私自身が解放され、肩の荷が下りた。

お父さんごめんなさい。
お父さんが、お母さんのために残した遺産の一部を、詐欺師という、どぶに捨ててしまいました。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

6月生まれ
そのせいか、寒さより、暑さに強い
限界を超えた体重に苦慮して、昨年、カーブス入会
見た目より、感傷的で繊細(と自分では思っている)

目次
閉じる