父の庭先から『親方』

親方が来た。
地下足袋を履き、脛はゲートルを巻いている。

死んでしまった2本の樹を見に来てくれた。
物静かに話す、この人が気難しい職人にはとても思えないが、家来は結構恐れているように思えるときがある。

お茶が好きなんだ。
お茶が解る人には、飛び切りおいしいお茶を入れてあげたくなるのが人というものだ。

「ああ おいしい」
その一言で、全幅の信頼がおける。

父の庭をやたらに壊さない。
素人なりの、父の意向をくんで、形にならない雑木をそっとそのままにしておいてくれる。

もっともこれは、私の好意的な受け止め方で、狭い上、価値ある木が少ないから敢えて手を出さないのかもしれない。

しかし、親方とその家来が来ると、庭は平穏な空気で満たされてゆく。
草木は、人の心が読めるのかもしれない。

枯れた2本の樹は私を恨んでいないだろうか。

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この記事を書いた人

6月生まれ
そのせいか、寒さより、暑さに強い
限界を超えた体重に苦慮して、昨年、カーブス入会
見た目より、感傷的で繊細(と自分では思っている)

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