父の庭先から『夜汽車』

眠れぬ夜、花冷えの寒さの中で、何をするでもなく動かないでいる。
今夜は家中が、ことりとも音を立てない。

遠くに夜汽車がゆく。
あれは、横浜線。下りの最終電車。八王子どまり。

昔々、幾夜となくこの音を聞いていた。
単線でこげ茶の車体。座席はあせた緑で、乗客はほとんどなし。
就職の決まった友達が、毎日この電車に乗らねばならないことを嘆いていたっけ・・・
仕方がないね、支店が八王子なのだから・・・
慰めにもならなかったが・・・

あれから何十年たったのだろうか。
夜汽車の音に、遠い昔に思いをはせていた。

今夜は、屋根裏に訪ねてくるものもないようだ。

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この記事を書いた人

6月生まれ
そのせいか、寒さより、暑さに強い
限界を超えた体重に苦慮して、昨年、カーブス入会
見た目より、感傷的で繊細(と自分では思っている)

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