眠れぬ夜、花冷えの寒さの中で、何をするでもなく動かないでいる。
今夜は家中が、ことりとも音を立てない。
遠くに夜汽車がゆく。
あれは、横浜線。下りの最終電車。八王子どまり。
昔々、幾夜となくこの音を聞いていた。
単線でこげ茶の車体。座席はあせた緑で、乗客はほとんどなし。
就職の決まった友達が、毎日この電車に乗らねばならないことを嘆いていたっけ・・・
仕方がないね、支店が八王子なのだから・・・
慰めにもならなかったが・・・
あれから何十年たったのだろうか。
夜汽車の音に、遠い昔に思いをはせていた。
今夜は、屋根裏に訪ねてくるものもないようだ。